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大変だった?
「僕は亜種だから」
ヤヘヱの頓珍漢な横槍で、男を父親と認めさせられたのが悔しくて、アスカは胸のうちで地団駄を踏んでいた。フジがしてやったりと得意げにしてくれたのならまだしも、素直に喜ばれては否定も出来ない。そのせいでフジが続けたことにも、一拍置いてから気付いた。
「……亜種?」
ヴァンパイアに〝亜種〟があるとは驚きだ。興味が湧いて、胸のムカつきも収まって行く。
「何?それ?」
〝いのじをまづどうぜよど申じゃれだ我りゃがどのに……〟
フジが口にしたくらいだ。秘密にすることでもないのだろう。そう理解したアスカに、喋りたがりの聖霊らしく、それでもまだアスカを気に掛けるような怪しさで、ヤヘヱが誇らしげに答えた。
〝ブジが変異をねぎゃい出じゃのじぇごじゃる〟
話を聞きたくても、この調子で続けられるのはうんざりとアスカは思う。フジも同じなのか、手慣れた感じにさらりと言って話を引き取った。
「うん、あの時は大変だったよ」
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