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〝ムチ姫〟?

「クソっ」  アスカはフジに聞かれないよう口の中で小さく言った。フジの態度に、母親似の女顔が人気ゲームの主人公に似ていたことで知った忌々しさが蘇る。人とかかわらないよう一匹狼を気取って睨みを利かせていたのに、ほんの一時期、追い払っても付きまとわれ、悩まされたのを思い出す。  一年前のことだ。お嬢様口調の心優しい姫君と共に呪われた王国の謎を解き明かし、魔神に戦いを挑むという愛と冒険のゲームが発売された。アスカの顔がその姫君に似ていたのだが、僅かでも口にした奴らを罵倒し、蹴り飛ばしたアスカの尽力により、陰で続いた女扱いも派手に表立つことはなかった。 「けど……」  アスカは胸のうちで悔しげに思う。 「どこかのアホたれが……」  女番長口調の〝ムチ姫〟という裏設定を考えたせいで、罵倒も蹴りも褒美と思う秘密組織が誕生した。会員は〝しもべ〟と呼ばれ、〝ムチ姫〟にきつい口調で鞭打たれるまで待ての姿勢を取るのを信条とする。

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