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待ての姿勢?

「皆さんの中から三人を選んで……」  アスカはフジの変態的な喜びには目を瞑った。勿体ぶって話す内容は予想を超越しそうだが、フジの変態ぶりは予測可能な範囲にある。話の為なら見ないふりも出来る。 「変異の能力を与えて……」  フジは変態屋敷を建てた男を父親と慕う純粋さで変異した。素直で真面目そうに見えても、その裏に男と同じ変態魂を持っていたとしても驚く程のことはない。 「うぅぅん」  不満そうに唸られても、アスカは無視した。 「だから……」  愚図られようが黙って静かに頷き、続きを促す。 「うん、だからね」  フジが不意に口調を早めた。瞬間的にはアスカにも諦めたと思えたが、変態魂の病的な粘り強さは不滅と直後に気付く。 「わかりやすいようにヌシさんが三人に名前を付けたよ」  続きはアスカのきつい催促で鞭打たれてからというのだろう。フジは唇を固く引き結び、銀白色を帯びた錫色の瞳を興奮気味に潤ませ、自ら進んで待ての姿勢を取っていた。

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