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時間を無駄に?
「むぅぅ」
フジは唇をきゅっと引き結んだまま否定するように唸った。そしてヴァンパイアならではの高速で首を何度も横に振る。顔の輪郭が霞んで見えない速さのせいか、アスカには胸糞が悪い。冗談にしようと思って言ったことを、フジに〝ふざけるな〟と返されたようなものだが、いい加減うんざりして来る。
「ったく」
アスカはむすっと言って、怒鳴るように続けた。
「でっ!」
同時に、フジの高速首振りがぴたりと止まった。そこに霞んで見えなかった眩し過ぎる笑顔が現れる。それもまたアスカをムカつかせるが、明るく元気に弾むように喋り出したフジの邪魔はしないでおいた。
「もちろん変異にはヌシさんの許可が必要だよ、内緒でしたらその場で塵になるしね」
余りに時間を無駄にしたからだろう。フジにはわかる話でも、アスカにはすっと話が繋がらない。
「えっと、それで……」
どうにか思い出して言った。
「クソガキがクソを三人選んで名前を付けたんだったな」
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