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ご満悦の体?

〝まさしく!〟  その叫び声と同時に、玩具のような腕時計の文字盤にへばり付いていた煌めきが突如跳ね上がった。フジに呼び掛けられるまで、煌めきは拗ねるように丸まっていたというのに、待ってましたとばかりに舞い上がり、光の粒を撒き散らす。 〝ふおふおふお〟  フジにいいように話を持って行かれたのだ。お喋りヤヘヱがいじけるのも仕方がない。その意味ではアスカもフジの有能さに遣り込められたと思うが、単純で威張りたがりのヤヘヱがそこに気付くとは思えなかった。 〝我らが殿より命じられしこと、うぬも覚えておったか〟 「うん、代表に任されたことだからね、忘れたりしないよ」  フジは煌めきに向かって楽しそうに答えている。ヤヘヱが拗ねるのは毎度のことなのだろう。対処の仕方も手慣れたものだ。 「ヤヘヱさんは任務を遂行する為にと、僕の腕時計を使ってくれたしね、光栄の至りだよ」 〝うむ〟  案の定、ヤヘヱはフジに持ち上げられ、ご満悦の体だった。

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