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暗然とした思い?

「アレも……」  人狼の繁殖様式を思いながら、アスカはフードの奥で笑うように続けて行く。 「食い気ってな」  ヴァンパイアは美しく生きる為に人間の血を食する。現代では誓約書を交わし、男女の別なく糧にするが、かつては疑似恋愛を仕掛けやすい女を選んで幻惑し、飢えを満たしていた。人狼は今も昔も獣らしく生肉を好む。気分が乗れば人間の食事にも合わせられる。幻惑も獣臭さを消す時にしかしない。 「っうこと、だろ?」  人狼は人間の女で繁殖して来たのだと、アスカは確信を持って思っていた。時代の変化を前に、精霊達の口を封じると決めたヴァンパイアに手を貸したのにも頷ける。塵になり兼ねない秘密をかかえているのだ。母親が何者なのかを隠すことで不安も解消する。国勢調査の人口推移に増減がないことでもわかる。不死に近いモンスターが命に限りのある人間と法の下で共に暮らすのは、つらく厳しい。その暗然とした思いはアスカも理解することだった。

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