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最初から本気?
「人狼とヴァンパイア?」
確かめるように問い掛け、アルファが頷くのを待って続けた。
「傑作だぞ」
アスカは笑った。リンとのタイマン勝負が楽しみでならない。腐れ男を振り回し、盛大に修羅場ってやるつもりでいるが、どうにも割って入れないとわかれば、潔く負けを認めるつもりでもいる。そうなると男の魂の解放に必要な修羅場は消えて、アスカの人生に潤いをもたらす予定の愛欲の炎も霧消する。アスカには何一つ得るものがないのだが、男も同様で、ヌシに逆らえないまま、完璧な無表情を装い続けることになる。それでも新たな愛を手にし、何百年も引きずる昔の女を忘れられるのだから、アスカより増しと言えるだろう。助けを求めた細く柔らかな声にも、それで納得してもらう他ない。
「っても……」
リンを〝癒し〟にはせず、最初から本気でいてくれたのなら、アスカも細く柔らかな声を聞き捨てていた。修羅場に期待し、愛欲の炎を希求することもなかったのだ。
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