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心置きなく戦える?

「クソっ」  繰り返してみたところで、気付いたことは消えてくれない。有り得ないと思えることも、ひょんな縁で起こるものだ。反対されての恋心となると、縁はさらに濃密になる。 「で、嫉妬か?」  リンと腐れ男、どう並べても、いちゃつく姿が思い描けない二人だが、リンが男の〝癒し〟という気付きから目を背けることは、アスカには出来ないでいた。昨夜、変態屋敷の駐車場からとんずらしたあと、男がどこでリンと密会したにしても、アスカを糧にした事実は包み隠さず話したようだ。糧を必要としない男が初めて手にした糧だ。翌朝、それが目の前に現れたのでは、アスカがリンでも、ぶちのめしたくなる。 「けど……」  アスカには目くるめく愛欲の炎を諦める気がない。〝癒し〟を探し回る手間も省けた。男を懸けてのタイマン勝負にも果敢に挑んでみせる。リンの襲撃はその始まりだった。聖霊の助太刀に気が引けていたアスカも、次には心置きなく戦えるということだ。

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