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素直に驚かされて?
「リンの……」
アスカのフードがアルファには目障りなのだろう。フード越しでは思いが掴みにくい。嫌らしいくらいにゆったりと話し出したのも、アスカを揺さ振ろうとしてのようだ。確かにイラっとさせられたが、だからといって突っ掛かりしない。アスカは黙って耳を傾けた。
「誕生がね……」
アスカがおとなしくするのは、アルファの出方を窺ってのことだった。アルファの並外れた素早さは、リンの尻を踏み付けた時に証明されている。自然界の精霊が作る時間と空間の歪みさえ超越するのだ。迂闊には動けない。
「向こうの……」
これが腐れ男というのなら、アスカはとうに大声でこっぴどく怒鳴り倒している。その違いがどこから来るのかには気を向けないが、頑固に黙り込むアスカに負けて、さっと続けたアルファには、してやったりといった気持ちになる。
「……の変異と重なってね、それが我らには不運だった」
「おっ?」
自分の間違いにも、素直に驚かされていた。
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