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誘惑的な獣臭?
アスカがフードの奥から何を口走ろうが、アルファには他愛もないことなのだろう。ゆったりと微笑み、それでいて不満げな眼差しでフードを見遣っている。人狼に読心能力があるとすれば警戒してしかるべき行為だが、そういった能力が人狼にないのはわかっている。都合良く解釈して笑っているだけのことだ。誤解のないようとっくりと、時間を割いてまでして話し合う意味はない。その思いにアスカはフードを揺らしたが、それもアルファに都合良く解釈されてしまった。宥めすかすような優しさで、鷹揚に言葉を返された。
「時代の変化は……」
野太い声の緩やかな響きに従い、強烈な匂いが薄められて行く。反対に、黒に近い茶色の瞳に散らされる黄金色の色彩は輝きを鮮やかにする。何に興奮しようが、激しさを静めたのではない。アスカに幻惑が効かないのを理解し、誘惑的な獣臭を撒き散らすのをやめたに過ぎない。
「越えてはならない種族の壁をないものにしたからね」
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