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まだまともだ?

 腐れ男が占いの小部屋に現れてからというもの、アスカには腹立たしいことばかりが続いている。嫉妬が理由で、真の人狼へと変身したリンに襲い掛かられたのは、その極致とも言えるだろう。フジに惚れた挙げ句の襲撃と理解をしても、嫉妬される理由が依然としてわからないのでは、アスカの腹の虫も収まりようがない。  アスカはフジを知らなかった。父親も認めた良心的で有能な代理人であることや、母親に引っ越しの挨拶に行かされた隣家の住人であることは、昨日の夜の出会いがなければ知らないままだ。明るく元気な喋りの小憎らしい変態を知ることもなく、町内会を発足させると息巻かれることもなかった。逆から言うのなら、鬱陶しさ満載のヴァンパイアに出会ったとなるが、そこに嫉妬を理由に襲い掛かられる謂れがあるはずもない。 「だろ?」  アスカは腐れ男を思って呟いた。フジが父親と慕う男に嫉妬する方が、まだまともだ。そう思って続けた。 「クソ野郎がっ」

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