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人狼の別なく?
アスカの『人間外種対策警備』における任務は、アルファに会って終了するはずだった。人間の職員に用心しろと、ヌシの懸念を伝えるだけのことだ。五分と掛かる用件ではない。ヌシにパシらされたのにはむかついても、パシリらしくささっと済ませ、その足で腐れ男の〝癒し〟探しに出向く計画も立てていた。リンの襲撃は予定にはなく、のっけから躓いたことになるが、それも全て胸糞悪いクソガキのヌシが、アスカに腐れ男を差し向けて、呼び寄せたのに始まる。
モンスター居住区では、アスカは平穏に暮らすつもりでいた。人間相手の占いに精を出し、面倒事に首を突っ込まない。そう決めて居住区の片隅で地味に暮らしていたのだ。それなのにヌシの身勝手な恐れに、かしましい精霊達まで抱き込まれ、引っ張り出されてしまった。そしてリンの子供じみた癇癪に襲われる羽目になった。
「ったく」
ヴァンパイア、人狼の別なく、苛立つ思いが口に出る。
「なめ腐りやがって」
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