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重たげに掠れ?
「だけどね、困ったことに、その分、こちらがリンの癇癪に付き合わされることになった」
アスカがリンに襲い掛かられたのは、フジに理由がある。それもアスカのあずかり知らないところでされた嫉妬が原因だった。そこら辺りの事情を、アルファはアスカに知らせようというのだろう。悠々と気取った調子の語り口には、取り入るような強かさも感じさせる。
「今朝もうるさく付きまとわれたよ、なんでも昨夜、リンが連絡を入れると、けんもほろろに忙しいと言われたそうでね、なのにアスカさんアスカさんと、君のことを長々話していたそうだよ、こちらも朝から長々聞かされてね、だから受付に追い払った、そこへ……」
話が終盤に入ったせいなのか、薄められたアルファの匂いが元々の鼻をくすぐる程度に戻されている。アスカは思わずほっと息を吐いたが、嫌みでしたことではない。それでもアルファの優しげな口調が最後の部分では重たげに掠れていた。
「……君が来た」
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