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変更はない?

 アルファは何もわかっていない。都合よく解釈して語り聞かせる話に、アスカが思いを重ねるのは腐れ男のことだけだ。それをアルファに気付かせようとは思わない。ヌシにパシらされたとはいえ、『人間外種対策警備』に足を運んだのが、男から頂くはずの愛欲の炎に蟠る因縁によるものと認めもするからだった。  アスカの胸の奥深くには、男が何百年も引きずる昔の女が宿っている。ヴァンパイアに変異したのも、その女への愛に他ならない。死を前に、ヌシに逆らえなくなるとしても、女を生かそうと変異を望み、身にいだく魂を凍り付かせたのだ。そして時が経ち、時代が変化した今になって、今度は女の方が男の魂の解放をアスカに願った。 「愛にはさ」  アスカはアルファに聞かれないよう口の中で小さく言った。 「愛でってか?」  それが男を懸けてのタイマン勝負だ。リンのせいでのっけから躓いたが、アスカの計画に変更はない。目くるめく愛欲の炎の為、迷わず突き進む。

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