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冗談じゃねぇ?
「で、だっ」
アスカはフードの奥からアルファに向かって声を張り上げた。同時にフードを挑発的に上向かせる。
「あんたはさ、耳がいい、俺が来たなんてすぐに気付いたさ、けど、リンにはいい刺激ってんで、無視したよな?」
これもアルファに都合良く解釈されようが構わなかった。少し前にも〝君が来た〟と、野太い声を重たげに掠らされたが、気にしていない。しかし、リンの襲撃はアスカに原因があるといった口振りには腹が立つ。それで続けた。
「奴が暴れたのもさ、のこのこ遣って来た俺が悪い、ガキんちょなんだし、許してくれってよ、んなとこだったな?」
アルファには悠然と頷かれた。巨大な肉の塊からすると粗野に映りそうだが、アルファの動きには気品がある。ヌシを思わせることからして、種族は別でも、中身はそっくりなようだ。要するにアスカには気に食わないということだ。
「ったく」
アスカは殆ど怒鳴るようにして言葉を繋いだ。
「冗談じゃねぇぞ!」
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