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伸びて来た?
アスカがむすっとすれば、アルファは喜ぶ。黒に近い茶色の瞳に黄金色の色彩を散らし、興奮状態にあるのを見せ付ける。どういった感情がさせるのかはわからないが、アルファとの会話はそういった調子で始まった。案の定、この瞬間にも黄金色の色彩を煌めかせ、嬉しそうにこう答えていた。
「君を怒らせてばかりだ」
アスカには頭のネジが外れたとしか思えないが、アルファの口調は楽しげだった。
「だけど、わかって欲しい、安寧な暮らしと引き換えて得た不幸をね、リンだけではない、我らにも感情を刺激するような出会いがないのだよ、だから、あんなにもリンを興奮させた君には……」
そこでふわりとアスカに近付き、熱く囁くような口調に変えて言った。
「ふふっ、そそられるな」
フードを通しても感じさせる熱に、アスカの体が自然とのけ反る。動きに合わせてフードも揺れる。そこにアルファの雄々しい指先が、厳しい自然に鍛えられたにしては滑らかに伸びて来た。
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