433 / 814

胸糞悪い煌めき?

「へぇ、あんたさ、俺んとこで……」  まずはわざと声音を低くして、言葉を繋げた。 「耐え忍ぶ、っうの?」  アスカにしてもモンスター居住区に移り住む前は、聖霊達との会話には気を使っていた。幼い頃は持って生まれた能力のせいで、周囲から気持ち悪がられ、〝あの家の息子〟と呼ばれるだけで、名前がないような扱いもされていた。成長するに従って知恵が付き、うまく誤魔化せるようにはなったが、物に向かって声を張り上げたりすれば、途端に頭がおかしいと囁かれ始めた。それも仕方がないと受け入れていた。モンスター居住区では受け入れる必要はない。アスカの能力をフルに活用するのなら、自然とそうなる。 「クソが!」  腕時計相手であっても、遠慮は無用だ。思いのままに怒鳴っていい。 「とっととうせろや!」  アスカはこれで決まったと思った。ヤヘヱも震え上がったに違いない。そう思って腕時計を見遣ったが、胸糞悪い煌めきは変わらず穏やかに揺れていた。

ともだちにシェアしよう!