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もふもふな髭面に?

「っうかさ」  カフェのドアを押しながら、アスカは考え深げに呟いた。 「俺もそっち側、ってな」  『人間外種登録変更制度』を使ってモンスター居住区に移り住んだ能力者は、アスカを除いて全員が『人間外種対策警備』に勤務する。カフェが彼らの行き付けというのは、噂にもならないくらいに知られたことだが、他に食事の出来る店がないのだから、当然過ぎる成り行きではある。その彼らと同類というのに、移住して半年、アスカだけは露骨に避けていたのだ。いざ入るとなると気が引ける。 「けど……」  欲しいのは情報だ。気後れしていては、山男に警戒される。 「……だな」  アスカはフードの奥の顔を上向け、胸を張って店内へと足を踏み入れた。もちろん山男に給仕されるのが売りの店だ。教えられていた通りに、毛むくじゃらな案内係に出迎えられた。もふもふな髭面に大きな体、コットンネルのチェックシャツにジーンズ、全てが丸太小屋風の巨大な建物に似合っていた。

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