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絶対に出て行かない?

〝余が……〟 「私が……」  アスカが少女の思いを感じ取った時、それが合図というかのように、闇に消えた少年の声にアソコを震わせる男の声が被さった。暗闇に光が差し、時間が再び動き出したとわかるが、闇と光の狭間で目にしたものは、従者の装いで少年と肩を寄せて城下を歩く少女の楽しげな姿だった。 「私が、君の願いに従うは今に非ず」  男の喋りを言葉として認識しても、頭の方が付いて行かない。アスカは混乱し、何をしていたのかを思い出そうと男の言葉を繰り返す。 「俺の……願い?」 〝余が……〟  そしてそれが答えであるように、闇に消えた最後の台詞が耳にふわりと届く。 〝……叶えようものを〟 「ぐぐっ」  アスカは思い出した。すぐに悔しいながらも気付いた。男に出て行けと無言で玄関を指差したことで、魂の記憶に触れて過去を見せられたのだが、そこには女の願いとは別の事実も内在する。つまり男は思い通りになるまで絶対に出て行かないということだ。

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