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楽勝だしさ?
「はん……だ?」
最後の〝ん〟を口にするまでもなく、男にはまったりと頷かれた。そこに答えを見るのなら、その目で直接確かめろと言われたことになる。
「けど……」
完全解放はまだまだ先の話で、今のところアスカはモンスター居住区を出られない。全くという訳ではないが、外出理由を申請しなくてはならないのだ。それも許可されるのは稀と来ている。どうしてもとなると、しつこく申請するしかないのだが、余程のコネがない限り、まず叶わない。両親が頻繁に訪れるのも、そうした面倒でアスカを煩わせたくないからだった。息子に任せていては待てど暮らせど会えないとわかっていたからでもある。
「こっちからは無理ってんで、あっちからってか?」
両親と同様の方法なら、すぐにもアスカに会える。観光客として来るのなら、何の問題もない。そう思って続けた。
「娘がおかしいってのに、俺の申請が通るのなんて待ってられねぇよな?客に紛れちまえば楽勝だしさ」
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