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男との再会?

〝あの日も……〟  それはアスカを無視し、一心に男だけを見詰めて、焦がれるように熱く語り掛けていた。 〝その者を腕に抱き、いずこともなく立ち去られました、ですが、わたくしを見捨てたのではないと、いつの日か必ずや呼ばれると、信じておりました、それ故に皆で魂を一つにし、眠りについたのです、なのに、わたくしを目覚めさせたのは、この少女の恋心、ヴァンパイアへの愛とは……〟  過去と現代、親しめそうもない感情を結び合わせたのが、男であると言いたいのだろう。そこで妖しく笑って、誘うような調子に口調を変えてから言った。 〝わたくしの思いも似たようなもの、なので……〟  憑依に強制はないと、それは続けた。廃墟同然の別荘に監禁されていた少女の朦朧とした意識に入り込み、憑依によって救出し、肉体を使わせる謝礼に、少女の夢を叶える。本物のヴァンパイアとの面会、即ち男との再会、そういった双方に利益のある取引をしたということだった。

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