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〝あの日〟を思って?

「ふんっ」  アスカには面白くないことだった。取引どうこうにではない。男が率先してそれに応じるのなら、アスカとしては楽が出来る。二人で幾らも言い合ってくれて構わないのだが、男は態度を少しも変えず、完璧な無表情でだんまりを続けている。そこが面白くなかった。その場にいながら、しかも子供のように抱きかかえられている状態で、男に向けた熱い語りをひたすら聞かされることくらい居心地の悪いものはない。  男が最強の安全地帯にアスカを運んだのは、直接この目で確かめさせようとしてのことだ。アスカの判断にゆだねるというのでは、余計な情報は邪魔になる。完璧な無表情でだんまりを続けるのも、その為と思えば許せるが、この居心地の悪さからして、こうなることを予測しての行動にも思えて来る。 「うーん」  唸ってみても楽しくはない。代わりにアスカはそれが言った〝あの日〟を思ってみた。何故かそこにヌシのクソ生意気な美少年面が思い浮かんだ。

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