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精鋭というのも?
「そういやぁ、あの野郎……」
アスカは変態屋敷でのことを思い出していた。ヌシは瞬間的に時間を操り、クソガキらしくアスカの意識に無断で侵入し、魂の記憶を呼び起こさせるといった嫌がらせをした。男が変異するに至った家臣の謀叛について、楽しげな口調でアスカに聞かせていたのだ。そうした喋りの中でこの台詞だけが鮮明に浮かび上がる。
〝僅かな護衛とあの人を連れて……〟
つまりそういうことだと、アスカにも気付けた。〝僅かな護衛〟が少女の姿を得たそれということなのだ。天下を狙う戦乱の世の感情は熱く激しい。忠義もまた、目の前に浮かぶそれに見るように、白く輝く程に煌びやかということだ。だからこそ、気付けたとも言える。意識内に現れたヌシは小姓装束だったが、その装いが過去のあの日に相応しいのなら、それの五人も小姓と見て間違いないことになる。男の身の回りの世話をするだけでなく、護衛になれるくらいの精鋭というのも確かだろう。
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