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任せることで?

「俺はまだ許してねぇぞ」  風に怒りをぶつけたところで無駄なことだ。アスカにもわかっているが、言わずにはいられなかった。自然界の精霊は人間がすることに干渉しないが、起因した災いにも不干渉でいる。全ては自然な成り行きでのことなのだから、当然と言えば当然だろう。彼らの声が聞こえるからといって、アスカの腹立ちを気にする訳もない。  星の創生から連綿と繋がる時間において、聖霊のすることは不変として続く。光を注ぎ、闇を作り、風を吹かせ、雨を降らし、炎を噴き上げ、大地を育む。そして人間の悲喜こもごもな行動を記憶として残す。  彼らは死者やモンスターに対しても同じでいる。遥か昔の神話のような時代には介入することもあったが、浄化も難しい悪と化した死者や、強靭な肉体でもって人間を滅ぼそうとするモンスターが相手では、やむを得ない。それでもアスカのような特別なモンスターを誕生させ、任せることで不干渉という立場は保っていた。

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