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どこよ?

「うーん」  アスカも馬鹿ではない。自分が早とちりしたことくらい、すぐにわかる。怒鳴り返したい思いを唸り声で誤魔化し、顔に出さない配慮もしてやれる。とはいえ、男を気遣うばかりでは芸がない。多少は苛立たせたい。それで男の誘いに乗って、体を傾けるようにして足元を見遣った。  足元には風がいた。強靭な風圧で男を立たせ、さらに雲を呼び、見目麗しい姿が地上から見えないようにもしていた。男がアスカ諸共に瞬間移動で空中高く飛び上がった拍子に、風がさらうように旋回したのだと、その様子がアスカにも見えて来る。男の誘いが意味するのは、まさにそこだった。しかし、素直に従っていいものなのか、アスカには甚だ疑問に思えた。唸ったことで冷静になれたのだ。男を苛立たせる話題に思い至れもする。 「俺の手さげかご」  男が壁となって現れた時には確かに手にしていたが、今はない。そこを質せる喜びにアスカの声音も自然と弾む。 「ったく、どこよ?」

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