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フジの魂の?
天下人となった隣国の領主が男の一族にしたことは、富裕な領地を直轄地にする為の召し上げだった。それを不満に思っても、君命に逆らえるはずもない。一族は遠流を受け入れ、配流先の侘しい山村へと移るしかなかった。断れば蟄居閉門は免れず、家名断絶も避けられない。とはいえ、それはある意味、天下人となった隣国の領主の男を偲んでの恩情でもあったようだ。男は無表情のままにこう続けていた。
「私であれば、即座に改易させようものを」
男の口調に笑いがあったのが、アスカには不思議だった。と同時に、何故だがフジの小憎らしい顔が脳裏に浮かぶ。
「てか……」
アスカは喉の奥で小さく呟き、男が自分の瞳に女を見ていたのを思い出す。もしかすると人間であった時のフジにも同じことをしたのかもしれない。変異を望んだフジに押し負けたのがそのせいとするのなら、アスカには呪いに思えることだとしても、フジの魂の奥深くには隣国の領主がいることになる。
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