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それしか言葉が?

「野郎が持ち込んだ仕事はさ、依頼主が逃げちまった、けど、報酬についちゃ、ちゃんと話を付けてあってだな……」  そう続けながらアスカは思っていた。とんずらするには男が会議に拘束されている今が絶好の機会だ。そしてアルバイト風山男を誘いに行く。そのことを失念していた自分に苛立ちもするが、そうした気持ちは胸に納めて、玄関ホールへとさり気なく足を向けていた。 「で、俺は帰らせてもらうぜ」  しかし、さすが敵兵の一人というべきか、すっと動いたナギラに阻まれた。当たりは物柔らかでも、そこは山男だ。遥かに大きい体に遮られては、アスカも足を止めざるを得ない。どかすには拳に物を言わせる他ないが、その覚悟を見せつつも、先に邪魔する理由を聞いてみる。 「どういうこと?」 「こちらは深奥にして神聖な森の中央部にて、闇の領域もございません、歩きとなりますと半日掛かりになりましょう」 「……マジかよ」  アスカにはそれしか言葉がなかった。

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