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気分は高揚?

「で……」  アスカは気持ちを切り替え、続けて行く。ここに連れて来られた件についても、さっさと片付けたい。その思いから、男の背中を蹴散らかさんばかりの勢いでどかし、アスカの剣幕に足を止めたアルファを横目で睨みつつ、素早い足取りで棺に向けて歩いた。そしてアルファが尻を掛けていた辺りに、負けじと男らしく、足を広げてどっしりと腰掛けた。 「あいつのことだけど」  男とアルファを交互に見遣って、心のうちでは青年を思い、何の結論も聞かされていない質問を面倒臭げに繰り返す。 「どうすんの?」  二人には真剣な世界をイチャつくと嘲られたのを気にしてなのか、さすがに男とアルファは仲良く顔を見合わせるような真似をしないでいた。それでも心情的には面食らっているようだ。男は完璧な無表情で、アルファは妙に畏まった顔付きで、教師に説教される生徒といった感じに並んで立っている。言うまでもなく、その神妙な様子にアスカの気分は高揚した。

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