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即座に答えて?
「ふーむ」
アスカは内心呆れていたが、反面では感心してもいた。男は生まれながらの殿様気質の上に、ヴァンパイアらしく完璧な無表情と沈黙とで感情を制御した結果として存在する。それを是としてみればアスカに何が出来るのか、男を無視しての会話が可能になる。そうした考えに沿って、アスカはアルファに話の続きを促した。
「っうと、こいつとの……」
顎の先で男を示し、青年の前世を思って言葉を繋げた。
「因縁って奴?」
「うーん、どうだろうね、私には君といった感じに思えたけれど」
「俺?」
何故そうなるのかがアスカにはわからない。しかし、すぐに気付けた。霊媒にはこの世に未練を残す魂が付き物だ。そして直近でかかわった魂というと―――。
「アホたれ五人組か」
「アホ……たれ?」
アルファの困惑に、アスカは説明するのが面倒と口をすぼめた。そのまま放置で居直るつもりも、何のことはない、完璧な無表情で沈黙を貫く男が即座に答えてくれていた。
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