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挨拶代わりの?

「かつて私の小姓をしていた者達ぞ」 「ああ……」  アルファの口調に揶揄が漂う。我が妻にと思い、時間を掛けて懐かせていた女を、男にかっさらわれたのだ。憎き恋敵の人間としての最期の様子にも、関心を寄せていたに違いない。その思いを今ここで、当てこすろうとでもいうのか、アルファは野太い声音に皮肉めいた響きを絡ませ、頷きながら話を継いでいた。 「君の質問、さっきは曖昧にしたけれど、あの青年が私を訪ねて来た理由、おかしなところはなかったんだよね、霊媒として、ここでの暮らしがどういったものになるのか、事前に直接聞かせて欲しいと言われて、こちらとしても断る道理はないからね」  そういった遣り取りのあと、今日の約束を取り決めた訳だが、実際に会ってみて、その面談が最初から間違っていたのを、アルファもすぐに認めさせられることになった。早々に暮らしぶりを尋ねられはしたが、それも挨拶代わりの問い掛けに過ぎなかったというのだ。

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