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やめねぇぜ?
青年は前世に捉われている。それを使命として、霊媒の能力を持って男の子孫を名乗る一族に転生したのでもわかることだ。その魂が描いた今生の人生は、過去を教訓にした生き方で未来を模索しようというものではなかった。男と女、そして謀反を起こした家臣との前世における因縁の遣り直しにあった。
男に関しては、美貌や黄金といった手掛かりをもとに、割と早い段階で見付け出せていたに違いない。女についてはさすがに悩まされたことだろう。可憐で清楚な御台像からして、人間種社会で精霊達に守られながら、山男並みのヒゲボーボーを理想に喧嘩三昧の人生を歩んでいたとは、考えもしないはずだ。モンスター居住区解放反対派に近付いたのも、男を中心に周囲を探ろうとしてのことだったのが見えて来る。
「てかさ」
アスカには面白くない話だが、仕掛けられたからには受けて立つ。その思いで続けた。
「役者が揃ったんだ、何したってよ、野郎はぜってぇやめねぇぜ」
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