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俺の出番?
「野郎が……」
折角掴んだ流れだ。アスカは青年を思って言葉を繋ぎ、顎の先でアルファを指して話を進めた。
「なんであんたに会おうとしたのかはわかったさ」
ここで二人にいちゃつかれ、乱されては敵わない。それでアルファが語った話をさり気なく持ち出し、二人の意識を本題へと向かわせた。
「けど、最終目的はわかっちゃいねぇ」
男の子孫を名乗る一族に転生したくらいだ。男というのは言わずもがなのことではある。敢えて誤魔化したのは、時代の変化が青年の霊媒としての人生に力を持たせたからだ。モンスターには秘匿の権利が与えられているが、男が人間種社会に登記される会社の代表を務める以上、麗しい顔を隠し切るのは不可能だ。一族の者達には直系の先祖と認識出来ないとしても、前世を理解する青年には可能となる。
〝自分が何者で、何をなすべきかを……〟
青年がその言葉に含めた思いを、アスカはこう言い換えて続けた。
「で、俺の出番、っうこったな」
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