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何させてぇの?

 男にはわかる皮肉のはずだった。そこに反応を期待をしたのだが、裏切られた。完璧な無表情と厳しい眼差しに僅かな変化も見られない。逆の意味でアルファも同様だった。アスカにはクソ忌々しく思えるにやけ面を大きくし、男へと可愛らしく傾ける頭もより近付けている。 「ク……ソっ」  本当のところ、アスカは執拗に皮肉り続けてやるつもりでいた。しかし、時間を無駄にしそうな気がして気持ちを抑えた。二人はアスカがあれこれ考えるのと比較にならない年月を生きているのだ。時間の感覚が違い過ぎる。その二人に合わせていては、怪しい山の頂上で夜を明かすことになり兼ねない。悠久の時に身を置くモンスターには有りがちなのかもしれないが、肉体的に人間のアスカには耐え難い。それでアスカは一人で強引に話を進めることにした。 「あんたらさ」  二人を見遣り、間髪を入れずにしれっと続ける。 「俺に何させてぇの?」  ここに連れて来られた理由をずばっと聞いた。

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