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マジ愛されて?

 男の返答は沈黙に尽きた。一言でも発したなら、軽くいちゃついていた程度の世界がくんずほぐれつの激しいバトルになりそうで、それを忌避しての自制でもあるようだ。となると、アルファは男を二人だけの熱い世界に引き入れようと、やる気満々でアスカを当て馬にしたことになる。  男が変異して数百年、女を掻っ攫われた恨みから、アルファはバトルという名の仕返しを何やかやと理由を付けて仕掛けていた。そうした恨みも、いつしか対等に戦える相手への称賛に変わったと言えそうだ。つまりアルファに限れば、女の存在は既に過去のものとなっていた。それでも男をその気にさせるには女の存在が重宝する。女の魂を潜ませるアスカとなれば、尚更だろう。 「ったくよ」  アスカはむすっと呟いた。胸のうちではそこに潜む女に、クソ面倒なことを頼みやがってと本音をぶつける。その思いに、男に向けて喧嘩腰にこう言ってやった。 「あんた、やっぱ、マジ愛されてんじゃん」

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