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〝特別〟の意味が?
「けどよ」
気持ちを抑えたとはいえ、むかつきが消えた訳ではない。それもあって、アスカの声音は多少の苛立ちを残したものになっていた。
「人間もやわになったしな、噂じゃ、変異出来るような輩はいねぇっうじゃねぇの、あんたらが人間上位で構わねぇから、時代を変化させたくなったってのも理解するぜ、で、このご時世、あんたはまったき闇なんて、耳にしたくもねぇんじゃね?」
「うん」
そう明るく返して来たヌシに嘘がないのはアスカも承知することだ。口調の端々に含みを持たせて、試すような口ぶりを見せても、ヌシの言葉に誤魔化しはない。
「そこはお兄さんも同じでしょ、キイが変異した戦乱の時代にだっていなかったのに、この時代に僕とこうして同時に存在するなんてさ、僕がお兄さんを〝特別〟って呼んだのだって、わかってくれるよね」
「んなもん……」
わからないと続けたかったが、アスカにはヌシが言う〝特別〟の意味が疑いの余地なくわかっていた。
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