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声を感じられなく?

〝アレよ!アレ!〟 〝うんうん〟 〝お巡りさん、来た?〟 〝来ったーっ〟 〝けど、けど〟 〝とばっちり、食ってたね〟 〝バンバンバンバン〟 〝叩かれてたのぉぉぉっ〟  アスカにしても聞いている分には面白い。しかし、絶対にかかわりたくはない。そう思いながら食べ終わった皿を手にして、一番身近な水の精霊から話を聞こうと考え、流し台へと運んだ。そのアスカの意図を察してくれたのか、蛇口を開いてすぐに水の精霊の奥ゆかしげな声が耳に響いた。 〝時が来るを待って〟 「はぁ?」  アスカはイラついた。割と話しやすい水の精霊でさえこの調子となると、他は悶絶ものとなるはずだ。それでつい、ぶっきら棒に続けてしまった。 「待てってもよ、時ってぇのがはっきりしねぇんじゃ……」 〝心配ない〟  アスカとしては不安だらけと叫びたい気分でいたが、我慢した。蛇口から流れ落ちる水に声を感じられなくなっては、無駄なことだ。何を言おうがそれ以上の答えは得られない。

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