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来てくれた?
「わかったよ」
心配ないと言われたのだ。不安は残るが信じるしかないと、アスカは諦め気味に思い、食器を洗って蛇口を閉めた。
「出たとこ勝負で行けってか?」
となれば、あとはこのまま休みを満喫するだけだ。風呂に入って、昨夜のゲームの続きに勤しむ。それで洗面所へと向かおうとしたのだが、ふと奇妙な感覚に襲われ、足を止めた。あれ程に騒がしかった別荘が静まり返っている。洗面所に向かう時はいつも、精霊達がルンルンで付いて来るというのに、その厚かましさもない。とはいえ、アスカにはこの感覚に覚えがあった。つまりそういうことなのだ。『人間外種対策警備』の入り口近くで感じたものと同じ状況が起こっていると、理解した瞬間、アスカの耳にドアベルの音が鳴り響く。
「へぇ……」
いっそのこと無視してしまおうかとも思ったが、無視したところで先延ばしにしかならない。向こうから来てくれたのだ。この機を逃す手はないようにアスカには思えた。
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