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押し入れた?
「だが、私とアルファに……」
男の話が真実であるかの判断は、アスカには出来ない。それでもアスカと青年を目にして間もなく、ヌシが姿を見せた時には、未だ闇の中にあっても、アルファが完璧な肉の塊に戻っていたというのは信じられた。
「……驚きはなかった」
ヌシの出現にそう感じたのも、二人共に想定していたからということだった。アスカがまったき闇の扉を開けたと知れば、後追いするのは確実と思っていたのだ。ところがヌシの手に子狼の魂があるのを見て、アルファ共々、言葉を失った。アスカに代わってヌシがするのを裏切りにも思えたのが理由というが、ヌシが先に来ていた事実によって、その認識も男の中では崩れ去ったことになる。
とはいえ、ヌシの行動も嫌らしくあった。ヌシはアスカから掠め取ったかのように、手にある子狼の魂を持ち上げ、そしてアルファが頷くのを見届けたあとに、子狼の魂を青年の胸へと、放るようにして押し入れたというのだ。
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