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第1話(クリス)
恋は脳の錯覚だ。
PEA(フェニルエチルアミン)という脳内物質が分泌されドーパミンという快楽物質の濃度を上昇させる。
したがってドーパミン系神経、報酬系神経のva神経が活性化し、前頭連合野、社会的認知に関わる側頭極・頭頂側頭接合部は活性が低下している。
要約すると僕は恋してバカになっている。
僕はクリストファー•グラスゴー。
グラスゴー博士と呼んでくれて構わないよ。24歳。博士号は3つ持っている。IQは198。
専門は物理学、量子力学。
現在は特務機関world Intelligence Agency。
通称WIAの科学技術顧問だ。
でもWIAに入ってからは、フリンジサイエンスに近い仕事ばかりやっている気がする。
フリンジサイエンスっていうのは常識外れの化学って事。
一般的な化学で説明されていない物や事ばかり。
こっちも要約するとオカルトちっくな仕事ばっかりって事。
そして今日、僕はWIAワシントン本部科学技術班からニューヨーク支部へ移動になった。
科学技術班ではなく、チーム•ブラックに配属だ。
チーム•ブラックには人造人間や人体発火などのフリンジサイエンスの宝庫のような人材が揃っている。
チーム•ブラックとはワシントン本部に居た時もたまに仕事で関わっていたけど、まさか僕までこのチームに入れられちゃうとはね。
正直、僕にとってこの移動は憂鬱だったんだけどニューヨーク支部なら彼が居る。それだけが唯一の楽しみ。
WIAでも屈指の人気を誇るライリー•スイーツ博士がニューヨーク支部には居るのだ。
ブラウンの大きな瞳、長いまつ毛、白く透き通る肌、ピンクいろの唇、少しだけカールしたブラウンの髪。
彼を例えるなら500年前に描かれたジョルジョーネの『矢を持った少年』。まさに中性的な美少年だ。
もう1年以上スイーツ博士にずっと片思いだけど、いいんだ。別に。
僕みたいな眼鏡で暗くてダサくて細い男なんてきっと相手にされない。
「ライリー、ずっと君が好きだよ」
心の中でだけ、ライリーって呼んでる。
「ありがとうございます」
「僕の妄想が喋った?」
「いえ、グラスゴー博士」
声のした方へ勢いよく振り返ると、そこにはずっと妄想していたライリーがいた。
僕の妄想よりずっとずっと綺麗だ。
「あ、、、今の聞いてた?」
「すみません、聞いてました」
ライリーは少しだけ照れたような困ったような顔で僕に笑いかけた。
「今日から宜しくお願いします」
自分の心拍数が急上昇するのを感じた。
「よ、よ、宜しく」
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