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第2話(ライリー)
今日は最悪な日。
ずっとずっと片思いしていた人に恋人が居た事が発覚した。
そう、失恋だよ。失恋。
僕はライリー•スイーツ。医学博士で今はWIAニューヨーク支部の科学技術班と医療班を掛け持ちしている。
僕が恋焦がれていた人は、スティーブ•ワイルド。WIAのエージェント。
背が高く、筋肉質で、鼻筋の通った爽やかイケメン。品があって、優しくて、強くて、僕の理想。
その彼が今日、恋人を担ぎ上げてニューヨーク支部に現れた。
スティーブの恋人の名前はマイケル•バーンズ。
詳しい事情は聞けなかったけど、2人は事件に巻き込まれたみたいで、マイケルはシーツをグルグル巻きにされて服を着ていなかったし、酷い高熱を出していた。
「エージェント•ワイルド!彼は?」
「マイケル•バーンズ。僕のパートナーだ。海に落ちて低体温症になり掛けた。今は高熱が出ているんだ」
「診察します。あなたは下がって」
「分かった。スイーツ博士、マイクを頼む」
「大丈夫です」
僕がマイケルの処置をしている間にエージェント•ワイルドはどこかへ消えていた。
点滴をして一先ずは容態も安定したから看護師のポップスにカルテを渡すと部屋を出た。
「彼、恋人居たんだ、、、」
自分の気持ちも伝えられないままの失恋ほど虚しいものは無い。
堪えていた涙が溢れた。
僕は慌てて、涙を拭う。
ダメだ、今は仕事中!!泣くのもヤケ酒も後から十分出来る。
それに今日は新しい上司がワシントン本部から移動してくる。クリストファー•グラスゴー博士だ。
所属は科学技術班では無いらしいけど、僕はグラスゴー博士の管轄に入る。
確かグラスゴー博士とは1年前に一度だけ挨拶した事がある。
WIA科学技術班の中でも天才中の天才。
24歳で科学技術班の班長で顧問になった有名人。
「もう到着してるかな?挨拶しとかないと」
気を取り直して、グラスゴー博士のオフィスへと向かった。
ドアが開いていたので中を覗くと壁に向かって喋っているグラスゴー博士が居た。
「ライリー、ずっと君が好きだよ」
え?僕??
どうしよう、聞いてしまった。
「ありがとうございます」
「僕の妄想が喋った?」
グラスゴー博士は驚いて慌てて振り返る。
「いえ、グラスゴー博士」
「あ、、、今の聞いてた?」
気不味いけど、聞こえちゃったんだよ。
「すみません、聞いてました。今日から宜しくお願いします」
「よ、よ、宜しく」
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