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第36話(ライリー)

何分ぐらい車に乗って居たかを出来る限りカウントする。 右、左に曲がった回数も数えておく。 スモークガラスで外の景色は分からないけど、沿岸部を走行しているようだ。 大体、体感で50分程走行すると車が停車した。 ニックが後部座席のドアを開ける。 「どこ?」 「怖がらなくていい。さあ、おいで」 ニックに抱えられると古い二階建ての洋館に着いた。 建物の外装は古いけど、セキュリティは最新らしい。網膜スキャンで扉が開く仕組みだ。 「早速、ラボに行こう」 建物の地下へ続く古い階段を下ると突然、無機質な白いスライド扉が現れた。 ここがニックのラボらしい。 ラボの隅にある簡易ベッドに寝かされた。 最新鋭の機器がズラりと並ぶラボは、僕が見て分かる限りだと粒子径分布測定装置、ラマン分光装置、蛍光X線分析装置、原子スペクトル測定装置のマーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置かな? 科学技術班を兼任しているとはいえ、ニックのラボを見ただけじゃ何をやっているのか検討も付かない。 「少し計画が早まったが、コレは君のために作った」 ホップスから奪ったカバンからボックス型の装置を取り出した。 それが何かは僕には全く分からない。 「WIAのせいで少し壊れてしまったけど、すぐに修理するから安心してくれ」 「それ、何?」 「君と僕を繋ぐ愛だ」 ニックが異常なのは知ってた。 僕には愛なんて無い。有るとすれば憎しみだけ。 毎日、通勤ルートを変えた。頻繁に引っ越し、WIAのファミリーケアはフル活用した。 無意識に特定の恋人は作らない様にしていた。 ずっとずっとアイリスの笑顔が忘れられなかった。何度も何度も生きているのか死んでいるのかも分からないアイリスに懺悔した。 僕と関わらなければ、幸せに暮らして居たかもしれない。 ニックのラボに飾られていた薔薇の花を見て涙が込み上げた。 「アイリスは、、、君が殺したの?」 「ああ、彼女はまだ居るよ?」 「え?」 「血液サンプルだけだけど」

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