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第38話(ライリー)
「血液サンプルってどういう事だよ!?」
「落ち着いてくれ、ここには血液サンプルだけだが」
ニックは嬉しそうに話し始めた。
「アイリスの本体はワシントンの実験病棟にいる。アイリスは体内の血液を全部抜き取り、人工培養血液に入れ替えておいた!
皮膚移植組織の壊死で合併症を起こしていたから君の人工皮膚再生医療も試したんだ。
脳は定期的に新しい下垂体を入れている。
心停止してからは人工心臓だからもう大丈夫だ」
「もう大丈夫?」
死んでいた方が、どんなに良かったか。
無理矢理に生かされて。
アイリスは恐らくもう意識は無い、それにほぼ脳死状態だ。
安らかに逝く事も許されないアイリスを想うと涙が溢れた。
僕のせいで、彼女は、、、。
「さあ、僕たちも新しい身体に生まれ変わろう。この装置は脳と脳を繋ぐブレインシェイクだ」
脳と脳を繋ぐ?
僕とニックの脳を?
「永遠に2人は一緒だよライリー」
僕は恐怖に冷や汗が大量に流れ心拍数が急上昇している。
発狂しそうな頭の隅で、このまま過呼吸を起こすと不味いなと冷静に考えている自分も居る。
「君と繋がる為だけにブレインシェイクを開発して来た。私が考えたブレインシェイクは画期的なんだ。脳の海馬や大脳皮質を繋ぎ一つの仮想現実を2人で共有出来る。身体は老化防止のため低温保存するけれど、いずれは老化を止める事も可能だ。
そうすれば2人で永遠に、、、」
ピーピー 警告 ピーピー 警告
突然セキュリティーシステムから大音量のアラートが流れた。
「なんでWIAに居場所がバレた?」
ニックは僕に近づくと衣服を剥ぎ取る。
「やめろ!通信機もスマホも無い」
下着まで剥ぎ取られ全裸だ。
「身体の中に仕込んだか?」
「違う!本当に違うから!」
身体が思うように動かないから抵抗も難しい。
「まさか!」
ニックはホップスのカバンを隅まで探す。
「これか!」
カバンの内部にあるチャックの部分の金具に、通信機を分解して位置情報の発信機だけが取り付けられていた。
「あの女、、、」
ニックから表情が消える。
「WIAが来る。皆殺しにして来るから待っていてくれ」
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