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第39話(クリス)

「攻撃陣形で配置に付いて」 エージェント•メイは先頭で腰を低くし銃を構える。 「おい、俺が先に行く」 マイヤーズ隊長がメイに言う。 「死にたくなかったらあたしに従いなさい。これは私のチームよ。あんたは後ろで博士のお守り役」 仏頂面でマイヤーズ隊長が僕の隣に戻ってきた。 「またお前のお守り役だ」 「宜しく頼みます」 その瞬間だった。 突然、古い洋館の正面玄関に機関銃が競り上がり乱射しはじめた。 ダダダダダダダダダ 「全員シールド展開!」 戦闘用スーツの肘の部分に普段は格納されている盾を広げる。 「ドローンで相手の人数を見てみよう」 僕はいつもポケットに入れている手のひらサイズのドローンのドロシー23を出した。いや、ドロシー24。24。 「そんなもんもってたのかよ」 「いつもポケットに入れてるからたまに洗濯しちゃうけどね」 ドロシー23はこの前、ズボンと一緒に洗濯しちゃったから調整中。 僕の相棒ドロシーは小型だけど赤外線スキャンや熱感知システム、超高性能カメラも搭載してる。 「人間は2人だけだね。地下室にいる。他は、、、この洋館に人はいない。オートセキュリティシステムかな?」 「おい、アレもセキュリティシステムか?」 通信機でドロシーの赤外線スキャンばかりを見ていた僕にマイヤーズ隊長が声を掛けた。 「え、嘘でしょ、、、」 入り口のドアの鉄格子が変形し人型を形作り始めた。 「ちょちょっと待ってね、あれ液体金属かな?え?え?すごいウネウネしてる!液体金属のアンドロイド?となると低温で融解する金属なら金属ガリウム?形状記憶、、、流体多結晶合金だね」 「お前、さっきから何か魔法の呪文でも唱えてんのか?」 「流体多結晶合金!ナノテクノロジーだよ。アレ凄いよ、もっと近くで見てみたい」 「おい、お前死にたいのか?」 完全な人型になった金属アンドロイドは右手をナイフの様な鋭い形状へ変えながら近づいて来る。 「ご、ごめん」   先陣にいるメイは背中に収納してあるグラディウスを抜いた。 僕の助手のダッシュが開発した武器で古代ローマ時代の軍団兵や剣闘士によって用いられた剣を現代風にアレンジしている。 短く、刀身は肉厚・幅広の両刃で、先端は鋭角に尖っている。 剣の柄の部分に刃を収納出来てコンパクト。小柄な女性のメイには振り回しやすいサイズらしい。 「かかってきなさいロボット」 WIA最強いや、最恐エージェントは相手がロボットでもお構いなし。正面から斬り込む。 アンドロイドはメイの攻撃をかわすと即座に強い蹴りを繰り出す。 メイはシールドで蹴りを受けると身体を大きく翻しアンドロイドの首元に剣を突き刺した。 首が半分落ちかけたが、金属が液状化し再度形状を戻す。 メイの顔付きが変わる。 「アレじゃだめだ。メイが危ない。液体金属は切り込んでも無駄だ」 Eチームがシールドを展開しながら銃でメイを援護する。 「何度攻撃してもアレじゃだめだ。消耗戦になればこっちが負ける」 「じゃあ、どうすりゃいいんだ?」 「あ、あ、えっと融解か凍結に粉砕、アイスマンかレッドファイヤーが居たら話が早いのに」 「ここにスーパーヒーローはいない」 人間しかいない。どうする、どうする。考えろ。考えろ。 考えろ!! 「ここって元々は農園だよね?食品加工用に液体窒素のボンベがあるかも!」 「液体窒素?」 「そう!あの液体金属アンドロイドを凍らせる!探すの手伝って」 「分かった」 メイ達Eチームが応戦している隙にマイヤーズ隊長と農園の奥へと入り込む。 きっと、キッチンや倉庫、納屋なんかに、、、 古い納屋の鍵をマイヤーズ隊長が銃で壊す。 薄暗く、埃っぽい。 あるはず、きっと、あるはず。 なきゃ困る。 「おい、コレか?」 マイヤーズ隊長が液体窒素のボンベを見つけた。 しかも、ノズル付き!コレなら行ける!

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