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第3話

「雲類鷲委員長!お疲れ様です!」  風紀室のドアをノックして開くと、風紀の腕章を付けた後輩が挨拶をしてくる。 「ああ。そちらこそおつかれ。」  応接間にはその後輩ともう一人。  金髪に、両耳にたくさんのピアス。右耳に4つ、左耳に3つといったところだろう。着崩した制服のワイシャツからも金属がチラリ。鎖骨にもピアスがつけられているのだろう。  いくら服装自由、髪型自由とはいえ、ここまで派手な奴はなかなかいない。 「で、彼は何をやったの?」 「無断外出に無断外泊です。朝に帰ってきたところを捕まえました。」 「そう。ありがとう。君は戻っていいよ。」 「はい!失礼します。」 風紀の後輩が部屋を出て行ったことを確認すると、金髪の彼の向かいのソファにどかっと座る。 「ゆうき、だっけ。」 「うん、そう。」  目の前の彼は頷く。 「で、外出て何してたの?」 「おねーさんと遊んでた♡」  ゆうきは正直に答える。 「それだけ?酒やタバコは?」 「向こうは飲んでたけど俺は飲んでないよ。」 「なんだよ、それだけかよ。」  それを聞いて俺はいっそう深くソファに沈み込む。 「申請すれば別にどこで外泊してもいいんだから、次からは申請を出すこと。今回はお咎めなしでいいよ。」  俺の発言を聞いて向こうはキョトンとした顔をする。 「へ、いいの?」 「見つからないようにしているだけで無断外泊なんてしてる奴他にもいるだろ。個人的な問題としては、朝早くに見つかるとこうやって駆り出されるから朝帰りはやめてほしいってところかな。」  口をへの字にして聞いていた金髪の彼は、数秒固まった後、俺と同じようにソファに沈み込んだ。 「なんか、風紀いいんちょって想像と違ったわー。もっと堅苦しい人かと思ってたー。」 「俺、そんなイメージあるのか?」 「あるある。風紀いいんちょに見つかったら最後。二度と学園の敷地を踏めないみたいなさ。」  だれが流した噂だ?本人である俺には心当たりがない。 「俺としてはよかったよ。まだ学園の敷地を踏めるんだから。」  金髪の彼は一息つく。 「だからといって、また無題外泊していいわけじゃないからな。あと帰るときは昼にしろ。」  俺の言葉にゆうきはぷぷっと笑う。 「なにそれ。授業サボってもいいってこと?」 「朝に呼び出されるよりはましだ。」 「やったー!サボりの許可いただきましたー!」  彼と言葉を交わすほど、調子の良いやつだと思う。 「一応、報告書書かなきゃいけないから、名前の漢字教えてくれる?」 「結城りん。」 「結ぶお城に、なまえはひらがなで結城りん。」

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