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第5話
「可愛く無いって何!?初めて言われたんですけど!!」
立ち上がって、大きな声でまくし立てる。
さっきまで使ってた敬語もどこかへ行っている。
「僕がちゃんとありがとうって言ったのに!ちょっと偉いからってさ!」
「俺、一応、先輩なんだけどな。」
「それは、ごめん、なさい」
口ではそう言うが、ほっぺたを膨らませて怒りをあらわにしている。
「まあ、今の素の方が可愛いよ。」
彼は目を見開く。
「そんなこと言われたの、初めてだ。」
彼に何があったのかは分からない。が、彼が猫を被るようになった背景は深いような気がした。
「なんで目薬なんて使ったの?」
「その、葵さんが場合によっては処分があるかもって言ってたから、色仕掛けで委員長を落としておこうって。」
あれで色仕掛けのつもりだったのか。
「そ。多分それは葵の脅しだよ。今まで君が色々やってきた問題児だから。そう言えば大人しくなるでしょ?
今回の件に関しては何も無いよ。」
「なんだ。」
より一層彼の表情が砕ける。
「まあ、俺としても厄介ごとが減るのは嬉しいかな。あまり仕事したくないし。
でも今回のように、変な奴に捕まったらいつでも呼んで。助けに行くから。」
「別に助けてもらわなくても一人で片付けられるので大丈夫です。」
「…やっぱ可愛く無いな。」
「ねえ!!」
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