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第4話
ゆっくりと取調室のドアが空いて葵が出てきた。
「話してくれた?」
「どうしてわかったの?」
俺の質問は無視して質問をしてくる。
「ほら、あの伸びてた二人。よく性暴行とか起こしている人じゃん。あと、葵には睨んでなかったし。」
瞳が潤んでいたことも言おうとしたが、男としては面子を保ちたいだろうから黙っておく。
俺の解答に納得がいったのか、葵が口を開く。
「ふっかけたのはあの二人。奴らがいきなり服を脱がそうとしてきたからだって。ボタンとかも取れていたし。明日、向こうの証言も聞いて、防犯カメラで確認するよ。正当防衛にしちゃやりすぎだけど。」
そう言って、取調室のドアを見やる。
「まあ、そんな事された後じゃ、ガタイのいい人は怖いだろうね。」
葵も美人というのにふさわしい容姿をしている。襲われた経験だってあるのだろう。
「ルイくんが圭太と話したいんだって。行ってきな。」
「…わかった。」
取調室に再び入り、二人きりになる。
向かいの椅子に座るも彼は一向に話さない。
ただ、何か言いたげにモジモジしている。
「その、ありがとう、ございました。」
感謝の言葉はいい慣れて無いのだろう。
「いいえ。ちゃんと話してくれてありがとうね。」
「はい。ほんとうに、怖くて。」
瞳をうるうるさせながら彼は言う。が、何か違和感があった。
さっき泣きそうになっていた顔とは何か違う。
「そっか。でも猫被らなくていいよ。」
そう言いながら、机の下から彼が手に持っているものを奪う。
「あ。」
やっぱり。でも今時、目薬なんて古典的な方法を使う人がいるんだ。
「可愛く無いな。」
「はぁ!!?」
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