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第46話

  「ごめん、寒い?」  移動した先は海だった。  寝巻きのまま外に出たルイに問いかける。  「ううん、大丈夫。」  ルイはこちらを見ることなく海に向かって言う。  そうは言ったが冷たい風が吹いた瞬間に肩をすくめたのを見て、俺が着ていたコーチジャケットを肩にかける。  「それ、着ていいよ」  「…ありがと。」  ルイはジャケットに袖を通しはしなかったが、引っ張って体を寄せていた。  「座ろ。」  砂を軽く払って、石階段に座る。  二人の座った場所に少し空いた間に風が通る。もどかしい。  二人の間に沈黙が流れ、波の音と蝉の声が聞こえる。  色々と話をしなければいけない。  けど、その前に。  想いを伝えたかった。  ルイの手を取って強制的にこちらを向かせる。  「ルイ、好き。」  やっと見れたルイは、泣きそうな顔をしていた。  その表情は俺が想いを伝えたことでより一層崩れる。  「嘘つき。」  涙を我慢するために紡いでいた口から出た言葉だった。  「ちがっ、」   「結城先輩と付き合ってるんでしょ!?なに?ぼくと浮気したいの!?ばか!」  思ったよりもいつもの調子で暴言を吐くルイに少し安堵する。  「バカだよね!僕は委員長とは付き合えないもん!好きになった、僕が悪い、んだ!僕のこと、好きな、わけ、ない、じゃんかぁ、うっ」  ルイの暴言はだんだん嗚咽混じりになっていく。  「違うから、大丈夫。」  ルイの身体を包んで、背中を一定のリズムで優しく叩く。  「こどもあつかい、する、なぁ。」  そう言いながらも一層嗚咽が止まない。  「ルイ、聞いて欲しい。俺のこと。」  背中を叩くことをやめないまま、話を始める。  このことを話すのは二人目だと思いながら、ルイの仕草、僅かに見える表情を一つも見逃さないと気をつけながら。

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