109 / 173
第46話
「ごめん、寒い?」
移動した先は海だった。
寝巻きのまま外に出たルイに問いかける。
「ううん、大丈夫。」
ルイはこちらを見ることなく海に向かって言う。
そうは言ったが冷たい風が吹いた瞬間に肩をすくめたのを見て、俺が着ていたコーチジャケットを肩にかける。
「それ、着ていいよ」
「…ありがと。」
ルイはジャケットに袖を通しはしなかったが、引っ張って体を寄せていた。
「座ろ。」
砂を軽く払って、石階段に座る。
二人の座った場所に少し空いた間に風が通る。もどかしい。
二人の間に沈黙が流れ、波の音と蝉の声が聞こえる。
色々と話をしなければいけない。
けど、その前に。
想いを伝えたかった。
ルイの手を取って強制的にこちらを向かせる。
「ルイ、好き。」
やっと見れたルイは、泣きそうな顔をしていた。
その表情は俺が想いを伝えたことでより一層崩れる。
「嘘つき。」
涙を我慢するために紡いでいた口から出た言葉だった。
「ちがっ、」
「結城先輩と付き合ってるんでしょ!?なに?ぼくと浮気したいの!?ばか!」
思ったよりもいつもの調子で暴言を吐くルイに少し安堵する。
「バカだよね!僕は委員長とは付き合えないもん!好きになった、僕が悪い、んだ!僕のこと、好きな、わけ、ない、じゃんかぁ、うっ」
ルイの暴言はだんだん嗚咽混じりになっていく。
「違うから、大丈夫。」
ルイの身体を包んで、背中を一定のリズムで優しく叩く。
「こどもあつかい、する、なぁ。」
そう言いながらも一層嗚咽が止まない。
「ルイ、聞いて欲しい。俺のこと。」
背中を叩くことをやめないまま、話を始める。
このことを話すのは二人目だと思いながら、ルイの仕草、僅かに見える表情を一つも見逃さないと気をつけながら。
ともだちにシェアしよう!