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第47話

 「ということがあったんだ。これが俺の過去の話。」  2回目だから、多分、うまく話せたと思う。  「小野を勉強会に誘ったのは、ルイと距離を置きたかったんだと思う、無意識に。」  ピク、と隣にいるルイが反応する。  「ごめん。」  「…別に。小野とは仲良くなれたし、むしろ感謝してる。」  ルイはすっかり泣き止んで抱き合っていたのはやめた。ルイが途中で恥ずかしくなったのか。けど手は繋いでいた。  二人の座った間の空間はもうなかった。  「今日、倒れたのはルイのこと考えててさ。 無視されたのは響いた。」  「だって、それに僕たち大変だったんだからね!」  「それは結城から聞いた。大丈夫だった?」  「うん、でも委員長のこと呼んだのに来てくれなかったの淋しかった。」  「ごめん。」  「僕、頑張ったんだから。委員長との約束、守ったよ。」  「うん、えらい。頑張った。」  約1日話さなかっただけなのに、その間を埋めるかのように会話をする。  「それで、さ、今の話聞いて、ルイがそれでもよければ、俺は付き合いたい。」  「僕と、委員長と、結城先輩の3人で付き合うってこと?」  「いや、違う。俺とルイが付き合うの。俺が結城とも付き合っているってだけで。」  ニュアンスの違い程度かもしれないが、これは訂正しておきたかった。  「そっか。」  会話が途切れ、ルイは考え出す。  真っ直ぐと海を眺めるルイの横顔を見つめる。  「ねえ、」  不意にルイがこちらを向く。  「委員長はどっちが幸せ?」  「…2人とも付き合える方が、幸せ。」  「…そっか。」  また、ルイは考え出す。  そしてまた不意にこちらを向く。  「委員長、僕も、好き。」  泣き腫らした目が細まる。  「付き合おう。」

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