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ナイショの宴01
大学生になって、初めての彼女が出来た裕太に祝賀会を開こう! と言い出したのは同じ学部の友人である沖田だった。てっきり店でも予約するのだろうと思っていたが、裕太の恋バナを肴に飲み明かしたいらしく、それなら、と一人暮らしをしている伊織が自宅を提供してくれた。裕太は有難くも申し訳無い気持ちで、せめてもと持参した食料により、それなりの宴が開かれていた。
「--で、ヤッたの?」
宴も深夜を過ぎたところで沖田が持ち込んだ酒もすっかり回り、話題は徐々に下世話な話へと変わっていく。沖田がにやにやして聞くので、裕太はあからさまに顔を赤らめた。
「ばっ、なんつー話をっ!」
「いや、そこ大事でしょ。童貞卒業したかしてないかの問題じゃん?」
「童貞って……」
初めて出来た彼女なのだから、必然的にそれ以前に行為は無かったわけで。沖田の言う通り裕太は童貞だった。
しかし、裕太は顔も整っていれば身長も高く、雰囲気も優しげで『The 好青年』という風貌に、全くモテないわけでは無かった。現に大学に入ってからは、よく女の子に声を掛けられていたり、連絡先を交換したがる子が多くいた。
じゃあ、なぜ今まで彼女が出来なかったのかと聞かれると、ひとえにただ、中高と男子校だったので女の子との接触が無かったというだけだ。
「してないの? したの? 早く答えなよ。ねぇってば!」
執拗に聞いてくる沖田に「煩いな!」と声を荒げる裕太だったが、顔を真っ赤にしたまま蚊の鳴くような声で答える。
「……したよ」
「え? ……えー! 嘘! すごいじゃん、おめでとう!」
正直まだ済んでいないとばかりに思っていたので、裕太の返答に一瞬面食らってしまった。沖田は思いがけない返答に興味津々と言わんばかりにそれでどうだった? と迫る。が、裕太は途端に顔を曇らせた。
「それが……」
こんなことを友人に話しても大丈夫だろうかと示唆したが、酒に酔っていたので重い口もするすると開く。
「実は三日前に千穂ちゃんと、その、そういうことをしたんだ。でも、はじめてだからどうしたらいいのか分からなくて……。本当は俺がリードするべきなんだろうけど、あんまり上手く出来なくてさ、しかも俺、なんて言うのかな……なんか…イ、イクのが早いみたいで……」
赤裸々に話し出した裕太に、真面目な顔で聞いていた沖田だったが「うん?」と首を捻る。
暫く考えて沖田の口から出た言葉は、ど直球な言葉だった。
「つまり早漏ってこと?」
「〜〜ッ! で、でも、その分、回数は多かったから彼女も満足してたから!」
沖田のデリカシーの欠片もないストレートな言葉に必死に弁明をするが、その様をより面白く思った沖田は揶揄うのをやめない。
「いや、回数多くても挿れてすぐとかダサいでしょ?」
「ダサッ……って、お、 沖田だって全然イカないから大変だって、エミちゃん困ってたらしいじゃないか!」
「はぁ!? 誰から聞いてーー」
「千穂ちゃんから聞いた」
エミとは沖田の彼女の名前で、千穂とは親友である。その繋がりから裕太と千穂が付き合うようになった経緯でもあるが、まさかの爆弾発言に沖田は「あのお喋りめ……」とため息を漏らさずにはいられない。
「うわ、女怖ぇ。俺そんなこと言われてたんだ。ちょっとショックなんだけど」
「ふん、満足させたって点なら俺のが数倍マシだな」
「は、つい先日まで童貞だった裕太くんが何言ってんの? 回数だけあってもテクがないと獣と変わんないから。そもそも、エミのが大変って言うのはずっとイキっぱなしで辛いって言う意味だよ」
「はぁぁ!? おい、伊織!」
「伊織くん!」
「……?」
友人二人の言い争いを今の今まで静かに缶チューハイを飲みながら聞いていた伊織だったが、いきなり矛先を自分に向けられて困惑する。二人はキッと伊織を睨むと同時に口を開いた。
「早漏と遅漏どっちのがマシ!?」
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