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『牽制』
「なあ、俺の物になれよ」
投げやりな言葉は校舎の屋上の給水棟の裏側から聞こえた。
スラリとした長身に逆立てた短髪。制服のズボンはかろうじて腰で止まっているが、履き崩した上履きはかかとが擦り切れていた。
目つきの鋭いワイルドな容姿の園田哲(ソノダテツ)。従兄弟の一臣(カズオミ)同様、初等部からの持ち上がり組だから知らない仲では無い。むしろよく知っている。
一臣とB寮の寮長、僕は副寮長。園田はA寮の寮長。D寮まである全寮制。その寮同士は常に競い合っている。競い合ってお互いを高めるという精神ではあるが、ライバル意識が強すぎてトラブルを多発している。
それを押えるのは各寮に置かれた『寮長会』。生徒会がない代わりにこの『寮長会』が生徒を統べているのだ。
そして、寮同士のいざこざとなると、寮長会が集まって討論となる。上位A、B寮は度々この討論会を行っているのだから、園田ともそこで顔を合わせている。
「何を言ってるの? 僕が誰かのものになるなんてありえないでしょう?」
ふんっと横を向いて、目的の場所に座り込むと手に持っていた弁当を開いた。
教室で食べてもいいのだけど、僕の周りは騒がしい。
色白く色素の薄い髪は赤く染めるられれば発色もいい。好奇の視線に晒されもてはやされる。
高校生の男子校だからかもしれないが、中世的な雰囲気は性的な視線に犯される。
僕はそれを利用した。
『B寮の女王』それが僕の通称。
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